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INTERVIEW

魅力的な素材・技術が眠っているから地域でのモノづくりは面白い

梅野 聡
UMENODESIGN株式会社 代表取締役

家具メーカーの営業ご出身で、モノが売れるまでのプロセスを熟知している梅野さんは、商品開発に一緒に取り組む相手に合わせたターゲティング・企画/デザイン・さらには販路開拓まで請け負っている。 多くの地域事業者とモノづくりを経験されてきたご本人に、お仕事のスタイルや目指すべき社会について伺いました。

きっかけは高岡の漆器メーカーとの商品開発 商品開発からマーケティング・販路開拓まで一手に請け負っています

地域のものづくり事業者さんと商品開発をするようになったきっかけは、高岡漆器を製造されている天野漆器さんとの出会いでした。展示会で出会って意気投合し新商品のデザインさせていただくことになったのです。

実際に工房を見学させていただき、漆は木材だけでなく色々な素材に塗れるのだということを知り、「漆×ガラス」の組み合わせで新商品を考えることにしましたが、ガラスは透明なので漆の塗むらが少しでもあると内側からそれが見えてしまう。既にガラスに漆が塗られた商品は売られていましたが、どれもその塗むらを隠すために透明なガラスは使われていませんでした。ただ自分の中でどうしてもそこは妥協できず、何とか塗むらが出ないよう職人さんに練習を重ねてもらい、どこからも塗むらが見えない完璧な商品に仕上げていただくことができ「DEN」という新しいブランドとして発表するに至りました。

「DEN」の商品は、かかるコストが安くはなく、自然と価格も高めの設定になるため、売り先として日本の伝統技術を高く評価してくれる海外の市場を選びました。海外の展示会に出品したところ大変好評で、すぐに販売代理店との契約が決まったほか、海外のセレブから来客用にと大量に発注をいただくこともありました。「DEN」は2011年に立ち上がったブランドですが、未だに新規商品を発表し続けていています。

このプロジェクトで地域の伝統的な技術の面白さ・可能性を感じ、これまでに多くの事業者さんと一緒にその魅力を最大限引き出せるような商品を開発してきました。多くの事業者さんと商品開発を進め、担当させていただくブランドが増えてきたので、それらの商品を取りまとめマーケティング・販路開拓を進める「hint」というプロジェクトを立ち上げました。「hint」の中で、僕が全ての担当ブランドの営業窓口になっています。例えば「hint」の名前で展示会に出品し、僕がバイヤーと直接会話をすることで次の商品開発のためのヒントをもらえますし、何なら他の事業者の商品も紹介できる。元々メーカーの営業出身なので売るのは得意です。

「hint」は「いいものをつくって、沢山の人に届けよう」ということをテーマにしていて、そこに共感し参加してくれる事業者さんが今後もどんどん増えていってほしいなと思っています。「hint」に参加してくれている事業者は、基本的に皆さん他産地他業種なので互いにいい刺激を受けるようで、お互いの商品を売りあったり、コラボレーションをして新しい商品を作ってみることになったり面白い化学反応が次々と起こっていてこの輪をもっと広げていけたらと思っています。また現在はオンラインのみですがいつかは実店舗も出してみたいですね。

日の当たらない技術・素材を、形を変えて探している人に届けるのが仕事

お付き合いをしている地域の事業者さんは、規模の大きな会社から家族経営の小さな会社まで様々です。商品開発をするうえで、事業者さんとのコミュニケーションやマーケティングの方法はその事業者さんに合わせて考えています。

例えば高岡で100年以上続く鋳物メーカーの能作さんとも新商品を開発し、これも結構ヒットしているのですが、この会社は従業員が多く、大きな工場もあり生産力がある会社ですので、それなりに量が出やすい商品を作って市場に提案することができます。

一方で、規模の小さい会社では、まず社員全員としっかりコミュニケーションを取って、新商品の開発に対してモチベーションをあげてもらえるよう努力します。そうでないとなかなかいいものは作れません。また生産力もそこまであるわけではないので、作る商品の価格設定、ターゲットの設定には気を付けるようにしています。あまり高すぎて売れなくても意味がないですし、手間暇をかけず加工賃を安くして価格を下げると今度は職人の腕が鈍ってしまう。そのため高付加価値の商品をそれなりの単価に設定し、それを認め購入してくれるターゲットに絞り込んで作っていく必要がありますがそのバランスは難しいところです。

今後もまだ日の当たっていない技術や素材を、どんどん世の中に再提案していきたいと思っています。事業者さんにとっては当たり前なモノ・コトでも知らない人間にとってはとても魅力的ということはよくあります。僕が手を加えることでそういう新しい提案をしていきたいと思います。

 例えば、自動車・船舶・家電・介護などの企業にクッション素材を卸している香川県の事業者さんとは、その素材がもつ絶妙なクッション性を活かした、おしゃれでかわいいグラフィックデザインのインソールを作りました。これも海外の展示会で人気が出て知る人が増え、イギリスのリバティやスヌーピーとのコラボが決まり多くの発注をいただくことができました。要するにそれを探している人はいるので、その人に見つけてもらえるように商品を仕上げ、その人が出会える環境に出してあげるのが僕の役割だと思っています。

モノが適正な量だけ作られ、適正な人に渡ることで、適正な評価を受ける -そんな社会になってほしい

一からオリジナルでモノを作り贈る場合、贈り手側の立場で考えると、モノの作り手とコミュニケーションを取って、そのモノを作る工程に触れることで、モノの価値がよく分かるというのはいい経験だと思います。モノを贈る相手にプレゼントするときに、苦労した点やこだわった点を語りながらプレゼントすることができるので、モノを贈られる立場の人から考えるとより思い出深いプレゼントになります。既存商品だと想いがここまでは強く伝わらないので、今の時代、ともすると簡単にフリマアプリで売られてしまう・・これは贈る側としては悲しい事ですよね。

 今は、個人間でモノの売買ができるようなサービスがいろいろと整備されてきたので、誰でも作家やクリエイターなどモノを生み出す側になれる時代になってきたと思います。これまでの時代は企業が主体だったので、一定数のターゲットがいるマーケットを決めて、購入しやすい価格設定のモノを量産して売るというモデルが普通だったと思いますが、モノは大量に作られれば作られるほど、その価値が下がっていってしまうと思います。

それが、例えば個人間での売買になると、自分が作るモノの価値を分かってくれる人にだけ売れればいいので、適正な価格で適正な量を作って売るというモデルに変わってきます。このように、いろんな個性・感性で生まれたモノが、適正なターゲットに、適正な量が作られて売られて、適正な評価を受ける、そんな社会になっていってくれたらとてもいいなと思います。

梅野 聡
UMENODESIGN株式会社 代表取締役

プロダクトデザインを中心に様々な企業や産地プロデュース、ブランディングを手がけながらインテリア、ファッション、ウェブ、グラフィック、パッケージなど多岐に渡る分野で活動。国内はもちろん欧米を中心に海外の展示会でも数多く出品され世界で販売されている。また、販路開拓事業として「品人・hint」を立ち上げ商品の流通に至るまでのマネージメントも行うなど現在も東京を拠点にジャンルを問わず様々な企業にデザインを提供している。グッドデザイン賞、IF賞など受賞多数。

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