IMAGINATION

錫製品の新市場を開拓しつつ、後世にロクロ挽き技法を伝えていく。

中村 圭一
錫光 代表

錫製品の新市場を開拓しつつ、後世にロクロ挽き技法を伝えていく。

中村 圭一
錫光 代表
埼玉県川口市にある錫光は、「ロクロ挽き」の技法を用いた手作業のものづくりにこだわる錫器の工房。当代の中村さんは、全国でも数少なくなった「ロクロ挽き」をなんとかして後世につないでいきたいとも考えていらっしゃいます。その錫光が今回、猫10匹と暮らす人気ユーチューバーの獅子目さんとともに、猫用の錫製水飲みボウルとプレートを開発した経緯を伺いました。

錫製品の新分野での可能性を模索しつつ、受け継がれてきたロクロ挽き技法を次代に伝えたい。

錫器の製作技術は、飛鳥・奈良時代に中国から伝わったとされます。神社仏閣の御神酒徳利をはじめ、盃、広口の皿など、古から今に至るまでさまざまな錫器が錫師により作られてきました。錫器は溶かした錫を鋳型(いがた)に鋳込んで成形しますが、錫光ではそれをロクロに取り付け回転させ、手に持った鉋(かんな)と呼ぶ道具で表面を削る「ロクロ挽き」で整えていきます。

「ロクロ挽き」の技法を操る職人は年々減っていて、錫器の産地である大阪、京都、鹿児島、そして埼玉におそらく20数名となってしまっています。錫光は私が二代目。私が師事した父・中村光山(こうざん)は、「現代の名工」の栄誉にも預かりました。ロクロ挽き技法を習得した職人は減っていますが、もし絶えてしまうと、もう一度復活させるのは大変難しくなります。古より受け継がれ、父から受け継いだこの技法を後世に伝えていくためには、従来の徒弟制度に変わる継承の仕組みづくりが必要。そう考え、私の技術を伝授する学校づくりを進めています。同時に技を身につけた職人が活躍できるよう、新たな市場の開拓も必要です。

今は、酒器などの食器や花器が主力商品ですが、まったく違う分野に向けた商品の開発にも力を入れています。

ユーチューバー・獅子目さんからのご依頼を受けて

錫には不純物を吸収し、水を浄化する作用があると言われています。関西では井戸を新しく掘ると、錫板を放り込むという地域もあったようです。「水がまろやかになる」など、こういった錫の特性を活かして、人間用の酒器や食器が重宝されているわけですが、今回、獅子目さんからご依頼をうけたのは猫用の器。数年前にペットの骨壷のご依頼はありましたが、ペット用の器のお話は初めてです。しかし、猫が腎臓病などを患いやすく予防のために水をたくさん飲んだ方がいいと伺い、なるほどと納得しました。錫光で錫のマドラーを作ったことがありますが、マドラーでひと混ぜするだけで、人間は水がまろやかになったと感じます。猫に感想は聞けないですが、猫の健康に役立つようなものができるのではないかと思っています。

新分野の市場開拓は、新しいことが好きな私にとっては楽しいこと。ただ、例えば私がアイデアを思いついても本当にニーズがあるのか、あるいはどこで販売するのか、など新しい市場には見えないリスクもあります。TSUKURIBAがつないでくれる、ニーズを踏まえ、かつ販売の場も描かれている案件はとても有り難く、安心して取り組むことができます。

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